慣性の力

日々色々なニュースが入ってくる。どれがノイズでどれが有用なシグナルなのか、判断する暇もないくらいだ。

 

これらのトピックはどのように判断すればいいのだろうか。深く吟味する価値があるものなのか、それともただ右から左に通り過ぎ行くだけのものなのだろうか。マクロ的な話は下記の通りなのだが、個々人のポジショニングや属性によって受け取り方は濃淡入り混じったものになる。まず、資産効果。間違いなく株式投資をしている人、していない人で格差が広がった。

 

「資本収益率(r)>経済成長率(g)」

 

「働けど働けどなおわが暮らし楽にならざり ぢっと手を見る」少なくとも、労働で豊かになれるという幻想は例え真実でなくとも与えられてしかるべきだ。希望がなくなれば、自暴自棄になってしまい、治安悪化を招く。闇バイトとか東横とかパパ活、港区女子的なものはこれと無縁ではないと思う。高度経済成長期は目に見える成長の果実の分配があった。少なくとも今は分配に与っていると強く断言できるのは有利なポジションを築いた強者の特権だ。

 

物価のバックミラーを見ると、直感とは異なる数字が出て驚く。素直に4月のCPIが1.4%という数値をそのまま額面通りに受け止めると(6月)利上げは無理だ、という感想になる。利上げに踏み切る場合、どういう理屈付けになるのだろう。おそらく、実質金利マイナス状態の解消が大義名分になるのかなと思う。利上げしたとしても、依然として充分緩和的な状況に変わりはないという建付け。もしくは、今後のエネルギー価格の上昇を見越した「予防的な」利上げ措置を取るのだ、という主張。いずれにせよ、スーパーの店頭食料品価格は高騰しており、少なくとも額面で給料が上がっていないと、インフレ負けしている状態の人が殆どだろう。

 

額面で賃金アップを勝ち取ったのは、若年層やブルーカラーの現業職、主婦パート層であった。中高年齢層はそれに比べれば「控えめ」な水準や据え置きの傾向が見られる。最大の負け組は年金受給者層である。物価スライドによる若干の変動はあるものの、基本的には抑制されたものになっている。ここでも、ねじれが起きている。直ちに生活が立ち行かなくならないのは、高齢者層はローンを返し終わった持ち家を比較的保有していることが多く、場合によっては含み益、子育て教育費の負担もないからだろう。その意味では、家すら買えなかった氷河期層は悲惨の一言である。一見勝ち組に見える若年層もいざ適齢期になったときに「買える家がない」という現実に直面する。何しろ東京23区の新築マンションの平均価格は優に1億円越えである。ダブルインカムで世帯年収1,000万円としても、年収倍率は10倍、超低金利時代ならともかく、固定金利の代表的商品であるフラット35ですら、2026年06月の金利は3.0%越えが予想されている。数千万から1億のオーダーでこの金利はいかにも厳しい。

 

財政と日銀のバランスシートは不思議な均衡にある。政府はインフレによる税収増に沸き、債務残高に占める対GDPは改善傾向にある。その一方で利払い費の急増という明確な痛みを受けるまでにはまだ時間差がある。国債の含み損にばかり注目が集まるが、日銀ETFによる含み益も相応に膨らみ続けている。しかし、残念ながらこれは取り出すことが出来ない帳簿上の数字にすぎないだろう。実現益を出そうとすれば、株価の下落は必至で、少しずつ売っていくほかないし、日銀当座預金への付利増加が見込まれる中、これらのETFからの配当金収入は、埋め合わすことのできる貴重な収入、命綱だ。黒田日銀時代の最大の負の遺産が超低金利時代に大量購入した日本国債であるならば、同時期に購入した日銀ETFは怪我の功名、今や虎の子になった。もしこれがなかりせば、もっと早く日銀自身の財務健全性が疑われ、債務危機という形で危機的状況に追い込まれていただろう。

 

一国の中央銀行の財務が株価に依存するというまことに歪な状況である。株価が上昇し続ける限り、持続可能というグロテスク。付利増加による損の垂れ流し+長期金利上昇による国債の含み損と日銀ETF含み益による綱引きという危うい均衡。しかし、株式市場の行方は誰にもわからないし、運否天賦に委ねられていることに他ならない。

 

日々刻刻と、巨額の利払費に圧し潰されるときは迫っている。ドーマー条件に従えば、名目成長率を長期金利を上回り続けさせなければならない。さもなければ財政は発散する。絶対使っちゃいけない金に手を付けてからが勝負の本番ならば、長期金利がコントロール出来なくなったら、名目値を弄る、すなわち更なるインフレに打って出る公算は高いと思う。もちろん、王道はまずはプライマリーバランスを黒字化して、新規国債発行を減らし少しづつでもいいから借金を返す債務圧縮を通じて、利払い費を減らしていくことだ。しかしこれには、増税や歳出削減が不可欠だ。これらのコンセンサスが得られるには、よほどの経済的危機や外圧がなくては残念ながら政治的合意が得られそうもない。

 

民主主義の誤謬というほかない。だからこそ、時には利上げという不人気な政策も辞さなければならない金融政策を中央銀行という民意からも一定程度独立した専門家集団に委ねるという仕組みが「発明」されたのだった。

 

未来は僕らの手の中に。ガラガラポンの予感を感じているならば、行動によってより良い未来を引き寄せなければならない。自分も含めて賢明なる諸氏が生き残ることを希望してやまない。

 

 

22日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続伸し、終値は前日比1,654円高の6万3,339円となり、最高値を塗り替えた。

 

【速報】昨年度の実質賃金は0.5%減と、4年連続のマイナスだった。 時事通信

 

日銀が5月22日に公表した営業毎旬によると、5月20日現在の保有国債簿価は約531兆8400億円でした。流通価格を掛けた時価は約479兆3800億円、含み損は約52兆4500億円でした。その後、保有状況が不変ならば、5月22日時点の含み損試算値は約51兆6100億円です。(#マーケットエッセンシャル   主筆 #前田昌孝)

 

日本の年間インフレ率は2026年4月に1.4%に低下し、前月の1.5%から減少しました。食品価格は18か月ぶりに最も低い上昇となり、コメのコストのさらなる減速が見られました。輸送(1.5% 対 2.1%)、住宅(0.8% 対 1.0%)、衣類(1.5% 対 2.1%)、家庭用品(1.8% 対 2.7%)、娯楽(1.3% 対 2.3%)、雑貨(0.1% 対 0.7%)のインフレも減速しました。医療費は前回の0.2%の上昇後、横ばいでした。対照的に、通信のインフレは加速しました(7.0%から7.4%)。一方、電気料金はより緩やかに下落し(-2.6% 対 -8.0%)、ガス料金も同様に(-3.4% 対 -5.2%)、補助金の影響が薄れました。東京は、円安と高エネルギー価格の影響を受けて生活費を緩和する動きを見せています。コアインフレも3月の1.8%から1.4%に緩和し、2022年3月以来の最低水準となり、3か月連続で中央銀行の2%の目標を下回りました。月次ベースでは、消費者物価は0.1%上昇し、3月の0.4%の増加から減速しました。 TRADING ECONOMICS.