「103万円の壁」雑感

インフレ下でバラマキとか正気の沙汰ですか?としか思えません。衆議院選挙の結果、躍進した国民民主党の看板政策。民意は自公政権過半数割れ。キャスティングボードを握った玉木さんの無双により、社会保障や税制、年金、働き方改革、賃上げ、全方位に渡って、諸制度の微調整が行われようとしています。得する人、損する人、ポジショントークが入り交じり、連日連夜、騒がしいことになっています。

 

底流としては、コロナ禍明けのインフレによる物価高、通貨安によるコストプッシュインフレ、少子化の影響による人手不足の顕在化、実質賃金のインフレ負けetcという複合要因があり、鬱屈した不満があったわけでして、過小評価していて、結局は、日本国民はこれまで通り現状維持を追認するだろうと高をくくっていたわけです。あぁインフレさえなければ!そもそも世界的規模でのパンデミックさえなければ。タラレバ。

 

今回、どれくらいの水準で決着し、参議院選挙を迎えることになるのか。政局次第では同日選もあり得ると思いますが、要は減税政策であり「民は重税に喘いでおります」という訴えの結果なのであります。

 

なぜ、民は重税に喘いでいるのか、なぜ経済成長が止まり日本経済は袋小路に陥っているのか、という答えをデフレ脱却の大義名分の下、ひたすら異次元緩和に邁進したこの十数年、社会保障費の増大から目をそらし続け、未必の故意とも言うべき、現状維持政策にこだわり、財政ファイナンスすれすれの日銀による国債の大量引き受けでごまかし。そして、それは国民が信認した政権の下、実行されてきました。

 

その結果か、はたまた偶然か、いざインフレになってみると、思っていたインフレとは違うwと異議申し立てしているのが現状の雰囲気かと思います。インフレになったら、増税で過熱感を抑えるというリフレ派の主張が履行されることはなく、真逆の減税政策に突き進もうとしています。思えば、社会保険料の増加によって、バランスしていたのかもしれませんね。

 

閑話休題。国会議員も有権者も、この「成功体験」により良くも悪くも学習し、次の国政選挙はさらなる財政出動、バラマキ合戦。歳出削減の機運は霧散し、財政規律の順守が守られることはなく、結果としてさらなる国債の大量発行が行われることは火を見るより明らか。

 

いささか話が脱線してしまいました。木を見て森を見ず。問題解決の方法として、手を付けやすいところから、なのか、本丸からなのかというのがあると思いますが、その文脈から言えば「壁」云々は明らかに本丸ではなく枝葉末節と言えます。問題の漸進的解決を図る、それ自体は決して否定されるべきものではなく、平時であれば至極真っ当な政策の進め方かと思います。ソフトランディング路線と言っていいかもしれません。逆説的には、Xデーを経ないとドラスティックな改革は出来ないでしょうから、これしかないと言えなくもない。

 

岸田さんの自民党総裁選不出馬から端を発し、過半数割れがもたらしたこの政治状況はパンドラの箱を開けてしまった、という気がしてなりません。過ちを改むるに憚ること勿れ、が理想ですが、過ちを許容できるだけの余裕が果たして今の日本にあるのか。この政策が誤っているのなら、次の選挙で是正されるべきだし、この路線が正しいのであれば、望むものであるのならば、、、。

 

「民は重税に喘いでおります」「民は重税に喘いでおります」身の丈に合わない大盤振る舞いを続けることが出来なくなった。シンプルに貧乏人は麦を食わなくてはいけないのに、そうしてこなかった、人口動態の変化に合わせて、痛みを伴う改革が不十分であった、宴の後始末として、産みの苦しみの真っただ中に、幸か不幸か我々は居合わせているというわけです。国家単位でみれば、お先真っ暗ですが、いつでも希望はあると思っています。

 

なんとかの壁は国家権力ある限り、残り続ける。肝心なのはゲームのルールが変わっても、柔軟に対応し乗り切る力。そういう力をひとり一人が養わなければならない。なんと世知辛いことか。普通に働き、普通に死ぬ、それは叶わぬ夢、高度経済成長がもたらしたいっときの幻。北斗の拳になったら暴力がすべてを解決する世の中になるだけ。漸進的改革による成果による延命が間に合うのか、破滅的カタストロフィが先に来るのか。答え合わせを見るのが恐い。まんじゅうこわいどっとはらい