時にはシリアスに

今日も今日とて、霞ヶ関東京地裁です。いきなり駅降りたらなんだかよく分かりませんが、細菌戦がどうしたこうしたとか国労だかの不当解雇だ、なんだで派手なシュプレヒコール&ビラ撒き攻撃です。いかにもな裁判所のある風景です。

開廷を待つ間、隣の法廷は何やってんだ、と思ってひょいと覗いたら「殺人事件」の審理やってるし…。裁判所のロビーで、ぼーっと眺めていると不謹慎ながら結構面白いものがあります。そもそも入り口で一般来庁者と弁護士・職員通用口が分かれているんで見分けるのは容易な上、先生方は誇らしげにバッジを付けているので、たちどころに見分けられます。しかし、メッキの剥げ具合で…というのは知らなかった。勉強になりますなぁ。検察の方々は、かの有名な秋霜烈日を付けているそうですが、こちらはお世話になったことがないので、実物を間近で見たことはないです。

一本目は、普通に裁判だったので、丁々発止のやりとりだったんですが、真打ちは「債権者集会」です。たまたま同じ日に時間をおいてあったんで軽い気持ちで出席したのですが、浮ついた気持ちなんか軽く吹き飛ばされました。まさにあれは地獄の一丁目です。もう完全に誰もが想像するであろう債権者集会まんまです。破産者は50絡みの夫婦なんですが、旦那の方は見るからにやつれて疲労困憊という感じだったし、見てて本当に痛々しかった。かえって奥さんの方が飄々としていて、いざという場では女性の方が肝が座るものかと連想したくらい。債権者は、破産管財人によると100名以上、もっとも今日来てたのは25〜30人くらいだったけど、ヤのつく自由業風な人、泣きそうな顔の中小企業のオヤジ風な人、銀行とか果てはノンバンク、街金風な金融業従事者っぽい人…。銀行なんていちいちこんな彼らにしてみれば吹けば飛ぶような案件のためにわざわざ来るとも思えないんで、もっと下のレベルなんでしょうが。
淡々と進む、というか管財人からお決まりの「鋭意調査中ですが残念ながら見るべき資産はありません」「分配は極めて厳しい状況です」なんて言われれば、みんな諦めの境地にもなろうかというものの、中にはおさまりのつかない人もいて、吊し上げ大会状態で、裁判官に窘められる始末。ほんとに、憤懣やるかたないという感じで、そりゃ何千万もいかれてしまったら、そっちだって死活問題だよなーとも思うので、複雑です。
うちの債権は説明は省きますが、売り掛けとかと違って時間は掛かりますが気長に待てばほぼ元本分は保証されることが分かりきっているんで、安全なところから溺れている人を眺めていたんですが、非常に後味の悪いものでした。自分が何をしたというわけでもなく「ただそこにいた」だけですが、逆の立場になったらぞっとする、というかやるせない気持ちになりました。この夫婦に対しては何の恨みもありませんので、同情の方が先に立つのですが、子供もいるだろうにとか、今はどこに住んでいるんだろうかとか、さすがにその時ばかりは色々考えました。
殊ほど左様に金の苦労というのは恐ろしいものです。金があれば、ヤン・ウェンリーではありませんが、嫌なヤツに頭を下げなくても良いし、こういう目に会うこともありません。あの場で感じた嫌悪感というのは、溺れた犬を上から叩くとか首吊ったやつの足を引っ張るとかそういうこと、息も絶え絶えの獲物にハイエナのごとく群がっているかのような振る舞い、そして自分もその中の一人という現実に、資本主義だなぁと柄にもなく哲学をしてしまい、マルクス先生、共産党宣言から幾星霜、世はさして変わっておりませんぞ、と思い、まさに戦わなきゃ現実と、というわけです。