東京オリンピック招致が決まったころ、マンション価格は新価格なる言葉やゼネコンの豊富な手持ち工事からくる資材高騰や建設需要の先食い、消費税増税による駆け込み需要があるたびに、暴落すると言われてきましたが、結果からみれば明白なように裏切られてきました。そのころに買った人は、2~3割の含み益を享受していることでしょう。バブル崩壊に伴う地価の下落、リーマンショック後の銀行融資がストップし、新興デベがばたばたと倒産し、投げ売りムードになったときが一番の不動産の買いどきでした。
その後はアベノミクスと共に大規模金融緩和が始まり、ローン金利が劇的に下がり、マンション価格は糸の切れた凧のように舞い上がっていきました。コロナ禍で一瞬、市場がフリーズしたときを除き、緊急事態宣言とともに、在宅勤務が突如として日本中で始まり、追い風になりました。
さて、少子高齢化社会の進行による人口減が一方にあり、他方で首都圏を始めとする都市部への集中は今後、益々進んでいくことでしょう。新築物件の供給は資材高騰や労務の逼迫による建設費の高止まりから減少傾向が続いています。一方、需要の方は国外からの引き合いや低金利を背景に依然として旺盛です。業界としては、音楽が鳴っている間は踊り続けるのが正義なので、頂点を目指しつつババ抜きゲームをしているのです。
かつては、年収の5倍までというのが定説でした。でもそれは、終身雇用や金利が機能していたころの話です。今は共働きが当たり前みたいですから、嬉々として10倍を優に超える価格で、ペアローンを組むことも全く珍しいことではなくなりました。数年単位でイグジットできるのならまだしも、30年間、価値を保ち続けることが果たしてできるのか?まぁそこまで考えて買う人は稀でしょう。
ところで含み益は、利確するまで幻想に過ぎません。幸運にも含み益たっぷりの物件を保有している人のおそらく最も賢い選択は、いったん売却して(当面賃貸暮らしをして)暴落を待つことだと思います。10年分くらい無料で住めたくらいで満足するのも、賢明な判断ではないでしょうか。まだまだ値上がりすると思って売るやつはいないし、これから値下がりすると分かっているものを買う人はいない道理ですから、売る方はここらがピークと思って売るわけですし、買う人は高値掴みかもと怯えながらも妥当な値段と自分を納得させて、買うわけです。定価のない商品の値決めとは面白いものですね。不動産は必ずしも、値段だけではないこともありますが、当たらず言えども遠からずではないでしょうか。
賃金が上昇すれば、物価も上昇する(筈)。当然、マンションの値段も上がる。賃金(所得水準)が上がって、マンションの値段が下がる、のならハッピーでしょうけど、そうはならないでしょうね、何か技術的なブレイクスルーでもない限り。
ある日突然、ゴミが黄金に代わり、黄金が糞と化す。しかしねぇ、バブル華やかなりし頃の80年代に分譲されたマンションは、40~50年くらいの経年だし、90年代に分譲されたものでも、築30年、40年なわけです。クリスマスケーキではありませんが、土地は劣化しないとしても、上物たる建物それ自身は確実に劣化します。まだまだ上がるかも、という欲豚の浅ましさに抗って見切りをつけるのは並大抵ではありません。売り時がまたくる保証は全くなく、未来永劫塩漬けする覚悟はありやなしや。
ローンを完済する30年後まで、今の金利のままであれば、良し。万一、金利が反転したら、変動で組んだ人は阿鼻叫喚でしょうね。財閥系デベは別として、古今東西、不動産業というビジネスモデルは、お金を借りてなんぼの、自転車操業ですからね。もし、今のマンション市況が崩れるとしたら、それはやっぱり金利次第かな、と思う次第です。そして、ローンを返せず、手放す人で溢れかえるときに、都心の良物件をキャッシュで購入したいな、と最近は夢想しています。「潮がひいたとき」に備えて、チャンスを待つ。