創元推理文庫『安楽椅子探偵アーチー』(松尾由美著)

フィーリングだけで購入したにしては、まずまず。着想としては、安楽椅子そのものが探偵役を務めるという設定の面白さなんですが、SF者的にはなぜ安楽椅子が喋るのか、なぜ「アーチー」にだけ知性が宿ったのかについては深く掘り下げられることなく終わってしまっているのが残念といえば残念。というか、あの市橋さんは、時計仕掛けのオレンジよろしく大音量クラシックを聞かせられながら、妖しげな映像でも見せられたんだろうなぁ、とふと思う。
椅子の持ち主が小学生なんで謎を持ち込むミステリマニアな同級生(余談だが、あの年齢であそこまで被れている小学生女子って一体・・・?自分は彼女の話すミステリ噺は全然分かりませんでした)との間で何も起こりませんが、もうちょっと年が上だったら違った展開もあったかも。まぁ基本的に、関係としてはアーチー=祖父、主人公=孫な役回りなほのぼの話なんですが、そうと見せかけて外人墓地の話とかは結構黒くて気に入っています。
ところで、アマゾンの著者略歴によるとお茶の水女子大学教育学部卒。1989年『異次元カフェテラス』を刊行し、91年には「バルーン・タウンの殺人」がハヤカワSFコンテストに入選」とあって、元々SFよりな人だったのですね、というかお茶の水ということはひょっとしたらSF研出身なのかしらん(調べれば分かりそうだけどそこまでの気力はない)。