そして、鐘は鳴る

 
同人誌は極めて同時代的なメディアです。
消費されるペースは早く、それを入手する人々はごくごく限られています。しかも、何も残りませんし、残しません。例外はイベント主催者が見本誌として回収した「ほん」でしょうか。日本最大にして、そしてそれは取りも直さず世界最大の同人誌の見本市、同人誌最即売会の中の即売会、であるとところの、あのコミケットにおいては、人知れずひっそりと見本誌が保管されているを聞き及びますが、アレが将来、一般に向けて、あるいは後世の研究者(笑)に向けて、あたかも国立国会図書館のように、およそ刊行されたありとあらゆるものを収集し整理し、分類しといったような機能を持つ拠点を開設するということでもなければ、おそらくは代表の胸のうち一つと、先立ちものがなければ到底かなわない見果てぬ夢であります。
また、同人誌は極めて属人的なメディアであり、非商業的な、商業ベースに乗りにくい、流動性に欠け、市場で流通されることは少ないメディアであるために、(インターネットオークション、同人古書店の台頭で劇的に改善されたものの)、ひとたび見失うと捕捉するのが難しくトレーサビリティーが極端に低いという商業出版物にはない性質が障害となり、その意味で「同時代的」と記述したのであり、一期一会の心境で同人誌即売会に臨まざるを得ず、買い逃しは即、幻の「ほん」化するというリスクを常に抱えているのです。