いったい官邸の情報管理はどうなっているんでしょうかね。意図的なリークなのか、観測気球なのか、うっかりなのか。と言うわけで、延期されていた日銀次期総裁が内定というニュースが、2023/02/10金曜日の夕方に飛び込んできました。本命視されていた日銀プロパーではなく、学者先生とのことです。国会への人事案の提示が週明けの14日なのですが、ほぼ決まりといった空気感です。秘中の秘であるはずの人事案が漏れるのはよろしくないと思うんですがね。
それはそうと、人選の経過なんかはおいおい明らかになってくると思いますが、日銀プロパーの人たちは打診されたものの固辞ということのようです。先行きの暗さを誰よりも知っているからなのか、黒田色がつきすぎていると辞退したのか、ほんとうのところは分かりませんが、普通に考えて日銀に入行したら、最高の出世は総裁職なのだから、よほどのことがなければ、普通断らんよなぁと思うわけです。何だかんだ、宮仕えのサラリーマンですからね。
立つ鳥跡を濁さずと真逆の現状、黒田さんが後戻りのできない非伝統的な大規模緩和をやり散らかした後始末が次期総裁に期待されるわけです。建前上、中央銀行は独立しているわけなので、君子豹変す、で、いっさいのしがらみ無く、ハードランディング覚悟で金融正常化に踏み出すことも、理論的には可能ですが、テクニカルな弥縫策に終始せざるを得ないと見込まれています。
さしあたりの焦点は、YCCの撤廃かと思いますが、アベノミクスへの総括もろくにせず、(日本はあまり政策の結果や効果の検証を軽んじる国なので)この反省なしに、走りながら考える、行き当たりばったりになりそうです。企業物価も高止まり、消費者物価への転嫁も道半ばなので、いくらインフレは一時的といったところで、2023年春になっても日本国内の物価の上昇が続くので、物価高の抑制のために、何らかの形で行動を起こすように迫られることは必定でありながら、打てる手がほとんどない、まさに火中の栗なわけです。
黒田現日銀総裁は安倍元首相が退場した後も、重しとして睨みを効かせていましたが、それがなくなることで、仕掛けてくるかもしれませんね。長期金利の上昇圧力、積みあがった国債の山、売るに売れない株式ETF、機能不全の国債市場など、日銀のバランスシートは、一朝一夕に改善できるものではありません。誰が総裁になろうとも、この時限爆弾が爆発しないように、腫れ物に触るかのように扱っていかねばなりません。いつかは爆発する、だた爆発する日を先延ばしにしているだけ、に過ぎないのかもしれませんが、とりあえず、黒田総裁は逃げ切りには成功したようです。
日銀総裁が交代ということで、やはりアベノミクスの終焉ということを、意識せざるをえません。当面は現路線の継続を表明したところで、いつまで持続可能なのかなと思います。利上げ圧力にいつまで耐えられるのでしょうか。
利上げをしない→物価上昇継続、円安、国債爆買い継続
詰んでますね。決断できず、ジリ貧ルート突入でしょうか。インフレで借金棒引きが既定路線とするならば、やぶれかぶれで、利上げをする必要は全くありませんしね。日銀の存在意義は物価の安定を通じて、金融システムの秩序を守り、日本の経済発展に資するという建前はどこにいってしまったのでしょうか。一方、利上げして国債が暴落しても、満期まで持つから、時価評価しないから、という金融村でしか通用しない謎の強がりをまた言うのでしょうか。決断しないということも、それもまた一つの決断でしかない。アメリカの景気後退局面を見ながら、2023年も問題山積、波乱の一年になるんでしょうね。ブラックスワンとしては、関東大震災クラスの災害、台湾侵攻、朝鮮戦争、コロナ再感染拡大、こんなところでしょうか。弱り目に祟り目みたいなことが起きないとは言えないところが恐ろしいですね。
あの日銀総裁人事が後世、ターニングポイントだったね、と言われないことを願ってやみません。