資格から自分を見つめ直してみる。

ふと気がつけば、自分が若手と呼ばれなくなるのも時間の問題と言うことで少々焦り気味な昨今です。ラインをきっかり3年間担当し、今はスタッフ的な業務に携わっているわけではありますが、将来の方向性を少しは真面目に考えないと、取り残されるのではないかーという危惧を前々から感じていた訳ではありますが、例えば、医療関係とかそういう風な確固たる専門性があるわけでもなく、ゼネラリストと言えば聞こえはいいですが、その癖、社内でしか通用しない無駄知識と人脈の開拓にあくせくするのが関の山で、事実、そういう人を何人も見てきました。じゃ、何ができるの?というわけで、まさに「できることをしろ。それで金をもらえ」なわけでありまして、したいと思うことを追求するのも良いのですが、今、出来ることは何か、という観点から少し考えてみることにしました。

そういうわけで、いわゆるキャリア志向として、どういう方向性があるのだろうか、と自問自答しているわけですが、いわゆる便利屋としては終わりたくはないな、というのが、率直なところです。上から、ただ便利に使われて、いざというときには、あっさりと切り捨てられるようなスタンス、そういうのは真っ平御免です。

言葉を代えると、いわゆるパート、フリーターなどは18、20でなら、学生兼務でなら見聞も広がるでしょうし、世間の冷たさ、社会の厳しさ、なんてのも統べててはないにしろ、一部は感じ取れるでしょう。あとは本人の資質です。だいたい、ほんとうに役に立つことなら、本人にとって得になることなら、誰も好き好んで口外などする筈もありません。耳寄りな話、うまい話、儲け話、そしてそれを売り込んでくる胡散臭い連中。それが本当であるならば、自らそれを実践し決して他に明かすことなど考えもしない筈なのに、人には勧めるということがどういうことなのか、賢明な皆さんなら、既にお分かりでしょう。そういうことです。
お役所は、不誠実かつ不親切ではありますが、基本的に虚偽はしません。なぜなら、自分がお縄になってしまうからです。その代わり、決して言質を与えることはありませんし、わざわざ、教えてくれることもない代わりに、適切な質問をすれば、渋々ながら答えてくれます(笑)。当然のことながら、質問の仕方が不適切であったり、管轄外であったりした場合は、たいていの場合はすげなくあしらわれるのがせいぜいでしょう。おまけにご親切なことに、正しい答え、正しい手順を秘匿しているわけではないでしょうが、開示にはひどく消極的なので、正しい相手、正しい質問に辿り着くまでがたいへんです。
わかりやすい例でいうと年金などでしょうか。このままではたいへんなことになる、と思っていた、と近い将来、厚生官僚は言うでしょう。しかし、「思う」と「する」では天と地ほどの開きがあるのです。

そういうわけで、時間があるうちに、役に立ちそうな資格の一つでもとって置いて、スキルアップの一助とか適性の見極めようかと。つーわけで、いわゆる「SWOT分析」*1を援用し、まずは現状分析です。自分が仮に転職すると仮定して、客観的に見て自分の「商品価値」はどのくらいか。どの方向に向けて売り込んでいったら良いのか。逆にどの分野を補強し、得手を伸ばしていけば良いのか。まずはここから始めることにしました。

「彼を知り、己を知れば百戦殆うからず」と孫子は言いました。しかし、岡崎久彦*2が指摘するように、「危うからず」と述べられていますが、絶対大丈夫という保証ではありません。それこそ、前提条件であるという意と受け取っていたおいた方が無難でしょう。自分の実力を知ることが出来れば、自ずから無茶なことはしないので、危ういことはない。孫子が後世に残したかった教訓はそういうことなのだ、と自分は解釈しています。加えて、自分を知る、とは相手あってのことです。すなわち、お山の大将ではいかん、と、周りと比べて自分はどうかと絶えず自省し、内省し振り返ること、それこそが客観的に自らの力量を適切に把握するということに他なりません。

と言うわけで、さしたっては、潰しがきく「日商簿記」と会社の大先輩から勧められた「ビジネス法務」を中心に勉強したいと思います。他にも幾つか関心があるのがあるのですが、あまり書き過ぎて、取らぬ狸になっても仕方ないし。けど、晒すことでプレッシャーをかけていくのもありかな、とも思うのですが。

*1:SWOT分析swot analysis / スウォット分析。分析のフレームワークで、組織の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの軸から評価する手法。SWOT分析の目的は、その企業・組織が持っているビジネス機会や外的脅威などの「外部環境分析」と、組織体制などの「内部要因分析」から、自社の位置付けを総合的に判断することにある。外部環境分析はさらに、経済状況や技術革新、規制などの「マクロ要因」と、自社の顧客や競合他社との関係、予測されるビジネス機会といった「ミクロ要因」に分けられる。内部要因分析とは、その企業が持っているリソースについて強み・弱みを分析していく。外部環境分析で扱う要因は、基本的にその企業・組織の力で変えることが不可能なもの。対して内部要因分析で使われる項目は、その組織内で改善していけるものだ。通常、2×2の軸でマトリクスを作り、想定されるビジネスチャンスにどのように強みを発揮できるか、逆に足を引っ張る要因が何かを特定・把握することで、それに対する対処策を立案し、実行する。参考url

*2:岡崎久彦【オカザキ ヒサヒコ】。外務官僚として、外務省・防衛庁の要職を歴任。その著書『隣の国で考えたこと』(中公文庫)、『国家と情報』(文藝春秋社)、『戦略的思考とは何か』(中公新書)は、歴史的名著。筆者の思考スタイル形成、文章作法に絶大な影響を与えたことは疑い得ません。これら3冊を読まれたことがある方は、当ホームページの文章や論証の進め方が前掲の書との近似性に気付かれることと思います。前掲の『国家と情報』内の「アメリカは頼りになるか」に収められている「アングロ・サクソンに賭ける」の論述の正しさは今でも色褪せないものと確信しております。しかしながら、いみじくも岡崎氏自身が作中で予言していた20年が過ぎた今、アメリカは未曾有のテロに見舞われ、対テロ戦争に持てる軍事力の凡てを注ぎ込み狂奔しているこの状況下に若干の危惧を感じないわけにはいきません。けれども、同じく「にっぽん第二共和国」偶感に収録されている岡崎氏自身の回想として述べられている、敗戦の数週間の間に交わされたという議論を決して忘れてはなりません。誰か一人が「もう一度米英に挑戦できるようになるまで何十年かかるのかな?」という疑問を提起したのに対して、もう一人の客が、「いや二度とアングロ・サクソンを敵にまわしてはいけない」と反論していました。その議論を聞きながら私【筆者注:岡崎氏のこと】は、内心ひそかに後者の考え方のほうが正しいのではないかと感じたのを覚えています。